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5, 石火矢

 『もののけ姫』では、「石火矢(ハンドカノン)」と呼ばれる鉄製の大砲が登場する。その砲身に刻み込まれた模様から、中国製の輸入品を基に生産したものと思われる。物語は室町時代であるから、末期であれば鉄砲伝来後であり、鉄の大砲も考えられなくはない。しかし、これはそのような単純な応用型フィクションではなく、歴史の新解釈によって生まれた現実性を帯びた設定なのである。

● 鉄砲は「種子島伝来」以前に日本に在った?

 鉄砲の伝来に関しては不明なことが多い。正史によれば、室町末期の一五四三(天文一二)年、種子島にポルトガル船が偶然漂着し、二丁の鉄砲(火縄銃)が伝来したとされる。これは、国内文献『種子嶋家譜』『鉄砲記』、国外文献『廻国記』『新旧発見年代記』『日本教会史』などの諸資料検討の結果決定された史実だが、実は異説も多いのである。
 一六〇七年に書かれた『鉄砲記』によれば、一年後に種子島でも鉄砲開発に成功し、その二、三年後には生産技術が全国的に波及したとのことだ。「ごく短期間で鉄砲生産に成功した」というこの記述は、当時の鍛冶職人たちの技術水準が驚異的に高かったことを伺わせる。しかし、貿易盛んな隣国朝鮮・中国から一切伝わらずに、漂着したポルトガル人から、わざわざ製鉄業の盛んだった種子島に着いた―というのも不思議な話である。
 隣国には鉄砲はなかったのか?否である。「種子島以前に隣国から鉄砲が伝来していた」と考えるのは、かなり現実性のある話なのだ。
 実際に、江戸時代に書かれた『中古治乱記』には、一五〇一年に南蛮国(ヨーロッパでなく中国と解釈する説もある)から鉄砲が献上されたが、火薬がなく、使用法が不明なので壊した―とする記述がある。同じく江戸時代に書かれた『北条五代記』『甲陽軍艦』『重編応仁記』などは一五一〇年に鉄砲が伝来したと記している。これらの書物は信頼度が低いようだが、新たな確証が発見されれば歴史が書き変わる可能性もある。