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●女性職能民・芸能民の活躍
中世の職能民・芸能民の特色は、何よりも女性が多いことである。室町時代の女性は、自ら新職を興して経営を担うほど自立的で、たくましく活発であったのだ。
その職種たるや膨大である。
まず、以下のような職種に女性が目立つ。山海の産物を扱う魚売、心太売、農産物や加工食品を売る酒作・餅売・麹売・米売・豆売・豆腐売、繊維製品を扱う紺掻・機織・帯売・縫物師・組師・摺師・白布売・綿売、化粧品や手工業製品を扱う扇売・白物売・挽入売・紅粉解・燈心売・畳紙売・薫物売、など。いずれも、販売・営業だけでなく、生産工程まで女性が担っていたようだ。
また、宗教・芸能民である白拍子・曲舞ゝゝ・持者・巫・比丘尼などの女性芸能集団もあった。これらの集団は、船を居として移動しており、代表者・経営主も女性のケースが多かったらしい。
平安末期以降には、重労働である炭焼の女性集団である小原女も確認されている。当時の炭は専ら製鉄の燃料に使用されていたことから、炭焼と製鉄は一体の職種と見る向きもあり、製鉄民の女性集団が実際にあったことも考えられる。
前述のように、炊飯米と野菜のおかずという典型的和食の調理法が確立されたのは室町時代である。醤油と味噌の二大調味料、餅・うどん・芋などの間食が一般に広く普及したのもこの時代なのだ。その影には女性職能民・商人の活躍があったと思われる。作中、ジコ坊が粥に味噌を入れて煮るシーンがあるが、これは味噌の普及という史実を反映させたものである。
更に、各種の訴状記録には女性が商売上の権利を巡って訴えを起こした例が数多く残されていると言う。おそらく、旦那より社会的地位が高く稼ぎが多い既婚女性もザラであったろう。
これらの例は、遍歴民女性が農村よりも解放された立場で社会進出していることを物語っている。逆に言えば、封建的差別の支配する農村から逃散して遍歴民になった女性が多かったとも解釈出来る。また、これらの女性集団が自衛武装していたのかどうかは不明だが、一説には近現代と価値観が違って自衛の必要がなかったのではないか(あるいは政治的に保護されていた)とも言われている。中世の絵巻物には無防備な女性の一人旅の姿が多く描かれていると言う。
ともあれ、『もののけ姫』に登場するエボシ御前のような有能な女性指揮官や、おトキのような男勝りの快活な既婚女性は、この時代にはたくさんいたと考えられる。室町時代には、女性職人や女性商人たちが軒を連ねた大マーケットが存在していたのである。