家畜のヤックルにまたがり、西へ向かって幾日もの厳しい道のりをへて、シェナはにぎやかな街にたどり着いた。
しかし、この街にシェナの求めるものはなかった。
店には求める金色の実が積まれてはいたが、すべて穀をむかれ、種には使えない。
商人は「畑などやるものはもういない」と語る。
それどころか、人買いが「人間」と交換に麦を持って来てくれるという不可思議な事実を聞かされる。
この街で取り引きされている主な商品は「人間」だったのだ。
「人間」と「麦」が交換されるとは、いったいどういう事なのだろうか。
私はここで「シュナの旅」の世界の難解さに戸惑ってしまった。
そんなとき、シュナは鎖につながれた少女とその妹をみつける。
すかさず奴隷商人がシェナに商談をもちかける。
シュナは、この奴隷となった二人を助けたいと思ったが、シェナに金がないと分かると奴隷商人は急に態度を変えた。鎖のムチで打たれる少女を救う力も術もシェナにはなかった。
どうすることも出来ない情けなさとはこういう事を言うのだろうか。
シュナはその場を立ち去る以外になかった。町を去るシュナの眼には涙があふれて仕方がなかった。
このシュナの悔し涙は何なのだろうか?と思う。
これからの少女の行く末を思うと胸が張り裂けんばかりだったか?
谷の人々を助けたいつもりでいながら、目の前の少女すら救えなかった自分の無力さに、ただ涙があふれたのか?
しかし、奴隷は少女の他にも大勢鎖につながれていたではないか。少女だけ助ければ奴隷が解放されるわけではないし、あの情況で権力に刃向かっても殺されるだけだったろう。
ただ、少女は奴隷商人がシュナを騙して家畜と銃を取り上げようとしている本音を暴き、鞭で打たれるのを承知でシュナを助けてくれた。鎖に繋がれ囚われの身となっても、自らを奴隷根性に堕すのではなく、毅然として奴隷商人に立ち向かった少女の心に、シュナは自分と合い通じるもの、人間の尊厳をかけた何かを見いだしたのではないだろうか。
これを見過ごして旅を続ける事は、シュナにとって極めて自己欺瞞的で情けない事だったと思う。
シュナにとって自分が試される最初の試練が少女テアとの出会いだった。