クライマックス。
帰国した聖司が雫を自転車の後ろに乗せて、朝日の見える丘まで懸命に走るシーン。その素直でひたむきな姿・表情は見ていて気持ちがよかった。
「雫を後ろに乗せて坂を上りきると決めたんだ」という聖司に「荷物だけなんて嫌だ。私も役に立ちたい」と荷台から降りて自転車を後押しする雫も又、聖司と対等に自己を主張する少女に成長していました。
坂を上りきると、朝靄の立ちこめる夜明けの東京の風景が広がっている。
2人は昇る朝日を見つめながら、将来を約束し合って物語は幕を閉じる。なんともすがすがしいラストシーンで、私はしばし呆然としました。
私はこの場面で、スペイン内戦を描いた映画「希望」(マルロー・原作)のラスト・シーンの台詞を思い出しました。
「愛し合うという事は、お互いに見つめ合う事ではない。同じ方向を見つめ合うことだ」みたいな台詞だったと思います。これは、同じくスペイン内戦でファシズムと戦い消息を絶った小説家サン=テグジュペリの格言の引用だったと思います(うろ覚えなので違ってたらごめんなさい)。宮崎監督はこの原作が気に入っていたようで、雑草ノートでも飛行機の話で引用しています。
コンクリート・ロードに囲まれた東京でも、夜明けの太陽は美しくやさしい希望の光に満ちている。
雫と聖司の物語はまだ始まったばかりだが、磨かれるのを待っている2人の中に秘められた宝石の原石は、いつか必ず輝きを放つ時が来るでしょう。
つかれきった現代の都会を舞台に、少年と少女のひたむきで純粋で前向きな恋物語をぬけぬけと見せてくれた監督以下スタッフの方々に、心からいい映画を見せてくれてありがとうと拍手を送りたいと思いました。